前回の記事で、Oracle Cloud VMware Solution(以下、OCVS)でVMware HCX(以下、HCX)を利用するための前提となる、ネットワーク設定からサイトペアリングまでの手順をお伝えしました。
今回は、後続の手順であるサービスメッシュ作成・L2延伸手順を記載し、仮想マシンを移行できる状態、つまりHCX環境の構築完了までを説明します。
1)環境構成図
前回の記事でも記載しているとおり、HCXの機能を検証する目的で、2つのOCVS環境での手順を前提としています。
環境構成図は以下のとおりです。
2)OCVSでのHCX環境構築手順(サービスメッシュ作成・L2延伸)
それでは、以下の流れでHCX環境構築手順を説明します。
1. サービスメッシュ作成
2. L2延伸
2-1. サービスメッシュ作成
前回記事で実施したサイトペアリングの完了後は、サービスメッシュを作成します。
サービスメッシュとは移行に関するタスクや機能を管理するためのアプライアンスのことです。
移行元と移行先との接続やL2延伸の構成のためなど、HCXによる移行を実現するためにはサービスメッシュを作成する必要があります。
サービスメッシュ作成時には、事前に以下のプロファイルを設定しておく必要があります。
- ネットワークプロファイル:移行元で構成されている、L2延伸対象のVLANを指定するプロファイル
- コンピュートプロファイル:Bulk MigrationやNetwork ExtensionなどHCXで利用するサービス・機能を指定するプロファイル
ただしOCVS環境では、上記プロファイルなど移行に必要最低限のものはデフォルトで用意されています。今回はデフォルトのプロファイルを利用する手順を説明します。
2-1-1. HCX Managerの管理コンソールへログインし、Infrastructure内のInterconnect > Service Meshタブ > CREATE SERVICE MESHを選択します。
2-1-2. 移行元のHCXサイト、移行先のHCXサイトが正しく設定されているかを確認し、CONTINUEを選択します。
2-1-3. 移行元、移行先のコンピュートプロファイルを選択します。今回はOCVS環境デフォルトのプロファイルを指定します。
2-1-4. 利用するサービスを選択しCONTINUEを選択します。今回は機能検証の目的で、以下のサービスを指定しています。
- Hybrid Interconnect:オンプレミスとクラウドを接続し、セキュアな通信を可能にする
- WAN Optimization:データ圧縮やプロトコル最適化により、ネットワークパフォーマンスを向上させる
- Cross-cloud vMotionMigration:異なるクラウド間での仮想マシンの移行を可能にする
- Bulk Migration:複数仮想マシンの同時移行を可能にする
- Replication Assisted vMotion Migration:vSphere Replication機能を利用して仮想マシンのデータをバックエンドでコピーしておき、vMotionの迅速化を可能にする
- Network Extension:L2延伸を可能にする
- Disaster Recovery:災害発生時に迅速な復旧を可能にする
以下のサービスは今回は指定していません。
- OS Assisted Migration:仮想マシンにHCX SentinelというソフトウェアをインストールしてSDDCとの通信を可能にするサービス。今回はOS内に追加でソフトウェアをインストールせずに検証するため未指定
- V2T Migration:NSX-VからNSX-Tへの移行を可能にするサービス。今回はNSX-Tのみの環境であるため未指定
※Replication Assisted vMotion(以下、RAV)は複数仮想マシンをオンラインで短時間で移行する際に利用しますが、デフォルトではコンピュートプロファイルに含まれていません。そのためRAV検証時には、コンピュートプロファイルでRAVを含めるように事前に構成しておく必要があります。
コンピュートプロファイルにおけるRAVの構成手順を説明します。
1. 管理コンソールのInterconnect > Compute Profilesから対象のプロファイル内のEDITを選択します。
2. サービス選択画面で、RAVにチェックを入れて画面を進めます。それ以外のウィザードはデフォルトのままで問題ありません。
2-1-5. Uplinkネットワークプロファイルを選択します。Uplinkネットワークプロファイルは、デフォルトでHCX用VLANを利用するように指定されたプロファイルで、"[クラスタ名]-vds01-hcx”のような名前となっています。
2-1-6. NSXリソースが配置されるネットワークコンテナとアプライアンス数を選択します。ネットワークコンテナはデフォルトのOverlay-TZで問題ありません。今回はL2延伸するネットワークは1つであるため、アプライアンス数は1としています。
※アプライアンス数は、L2延伸を管理するHCX-NEというアプライアンスの数を指します。1つのHCX-NEで延伸できるネットワークは最大8つですので、オンプレミスの10環境のネットワークを延伸するなど、8つ以上のネットワーク延伸を検討している際にはアプライアンス数を増やします。
2-1-7. 追加設定画面へ遷移します。今回は何も選択せずに画面を進めます。
2-1-8. プレビュー画面へ遷移します。今回は何も選択せずに画面を進めます。
2-1-9. サービスメッシュ名を指定します。今回はInterconnect-1を指定し、FINISHを選択します。
2-1-10. サービスメッシュが作成されたことを確認します。AppliancesタブのTunnel Statusが「Up」と表示されている場合、正常に作成されたことを示します。(約20分ほどで作成が完了します)
以上でサービスメッシュの作成が完了です。
2-2. L2延伸
サイトペアリングの完了後、L2延伸を設定します。
L2延伸を実施することで、同じIPアドレスのままで仮想マシンの移行が可能になります。OCVSでのHCXの環境構築手順(前編)と本記事(後編)の手順を実施している場合、L2延伸を容易に設定できます。
2-2-1. HCX Managerの管理コンソールへログインし、Services内のNetwork Extension > CREATE NETWORK EXTENSIONを選択します。
2-2-2. 延伸するネットワークを選択します。OCVS作成時に"クラスタ・ワークロードCIDRオプション”で指定したネットワークは"workload-1”という名前で作成されています。今回はこのネットワークを利用します。
OCVS作成時のクラスタ・ワークロードCIDRオプションは、以下から指定します。
OCVS作成時にあらかじめCIDRを指定しておくと、後ほど手動で作成する手間を省くことができます。
2-2-3. ネットワーク設定を以下のとおり入力し、SUBMITを選択します。
- Mobility Optimized Networking:トロンボーン現象を回避する目的で、オンプレミスを経由せずにクラウド内で通信を可能にする機能。今回は当該機能を利用するため、チェックボックスにチェック
- Spurce Network to Extend内のGateway IP Address/Prefix Length:延伸するネットワークのCIDRを指定
- Allow Overlapping VLAN:同一VLAN IDを持つVLANが作成されているかを確認する機能。今回は動作確認のため、チェックボックスにチェック
2-2-4. Statusに緑色のチェックマークがついていることで、L2延伸の完了が確認できます。(約10分ほどで作成が完了します)
L2延伸したネットワークは、"L2E_[元のネットワーク名]-xxxxxx-xxxx”というような名前となります。
以上でL2延伸も完了です。
3) まとめ
前編・後編の手順を実施することで、HCX環境の構築が完了しました。
クラスタ・ワークロード・ネットワーク設定など、L2延伸を行うための設定がOCVSでは容易であることがお分かりいただけたかと思います。
次回は構築したHCX環境を利用し、仮想マシンの移行手順を記載予定です。
どうぞお楽しみに!
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