この記事は、JPOUG Advent Calendar 2025
の22日目の記事です。
先日のOracle AI World 2025で発表があったとおり、Oracle Database 23aiがOracle AI Database 26ai(以降、26ai)になり、クラウド環境を中心に今後ますますAI活用の基盤として期待が高まっています。
一方、オンプレミス環境の最新バージョンは2025年11月24日時点では19cが最新であり、こちらも多くのシステムで利用されています。
19cがリリースされてから6年が経過し数々の不具合が修正されていることや、お客様の自己解決率向上の取り組みなどもあり、サポートセンターへの問い合わせはやや減少傾向にあります。
当社の自己解決率向上の取り組みの中でも、FAQに関しては昨今のAIの進化とも親和性があり、回答生成のソースとしての活用やお客様の問い合わせに有効な技術情報のレコメンドにより成果が出ています。
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※左のグラフ中の「問い合わせ」は、文字どおりお客様からお寄せいただいたすべての問い合わせ件数(障害・トラブルに関するものを含む)であり、「QA」は、その中の「使い方や仕様確認などの質問・相談」の件数を意味しています。
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※右のグラフは、問い合わせいただいたOracle Databaseのバージョンの割合です。
サポートセンターへの問い合わせが減少していること自体は、お客様環境における問題そのものの発生を減らし「問題を起こさない、起こさせない」という取り組みが実を結んだ喜ばしい結果と捉えることができます。その一方で、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)中心で行ってきたサポートエンジニアの育成には課題が生じてきます。
今回は、お客様の自己解決率向上のために力を入れたFAQ作成への注力と、そのFAQ作成をエンジニア育成に活用した取り組みをご紹介します。
FAQ
サポートセンターには、お客様から多くのお問い合わせが寄せられるため、自己解決率の向上や対応効率化を目的としたFAQ作成は、サポートセンターやコールセンター機能を持つ多くの企業で取り組まれています。
当社でも昨年、FAQを活用してお客様の安定運用に貢献しているといった記事を公開しました。
特に2022年頃からは、お客様の自己解決率向上や安定運用を支援するため、情報発信に注力してきました。その結果、FAQの公開数と参照数はともに右肩上がりで伸びており、それに伴い問い合わせ件数も減少しています。
当社の問い合わせシステムは、問い合わせの起票(入力)中に、その問い合わせに関連するFAQがレコメンド表示される仕組みです。実際に、お客様が問い合わせを入力している最中にレコメンド表示されたFAQを参照し、その後約10%ほどの問い合わせが送信されずにサイトから離脱しています。このことからも、FAQによって自己解決率向上(≒お客様にとっては問い合わせ工数の削減、当社にとっては問い合わせ件数の削減)に寄与できていると言えます。
育成の課題とFAQの社内活用
このような取り組みを通じて問い合わせ数の削減を実現できていることは大変喜ばしいことですが、その一方で、基本的なQAや手順の確認といった問い合わせが減少し、FAQでは解決できない高度な問い合わせの割合が増加すると、そうした高度な問い合わせに対応できるようなエンジニアのOJTでの育成に課題が出てきます。
当社では、データベース未経験者が多く新卒採用されることや、幅広い技術者になることを目指して、サポート業務<->フィールド(構築)業務<->教育講師業務をローテーションしていることもあり、人の入れ替わりが頻繁に発生します。
フィールドや教育でも顧客折衝や講師としての振る舞いといったその業務に合わせた能力が求められますが、サポート業務ではOracle Databaseに特化した基礎知識習得が求められます。
近年は、Oracle ExadataやOracle Database Applianceといったアプライアンス製品、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のようなクラウドの利用も大幅に増え、DB構成が多様化してきたことで、サポート対応時に考慮すべき範囲が広がっています。
また、Oracle Real Application Clusters(RAC)やOracle Data Guardといった高可用性構成の採用率も増え、問い合わせ内容は一段と高度化しています。こうした状況の中で、未経験者がサポート業務をしながら、OJTだけでOracle Databaseの基礎を習得することは難しくなってきています。
私自身は、年間で約300件以上の問い合わせに対応し、OJTベースで製品知識を習得してきました。昨今の製品の安定化、自己解決率向上は歓迎すべき成果である反面、基本的な内容の問い合わせ件数が減り、寄せられる問い合わせの難易度はあがっています。その結果、かつての私と同じようなペースで若手エンジニアに経験を積んでもらうことはもはや現実的ではありません。
お客様からの問い合わせへの対応を実際に担当するまでは、社内研修なども含め手厚くフォローをしていますが、実際の対応開始後もより早く、より多くの製品知識習得を目指し、サポートメンバーの製品知識向上にFAQを活用する取り組みを始めました。
FAQをDBエンジニア育成に活用
FAQは「Frequently Asked Questions」の名前のとおり、よくある質問とその回答です。比較的問い合わせが多く、かつFAQのドキュメント単体で自己解決しやすい技術情報がまとまっています。
当社では、このFAQを以下のようにエンジニア育成に活用しています。
まず、直近数年間に配属されたメンバーが対応した問い合わせを分析し、サポートセンター配属後2年間にアサインされることの多い問い合わせを抽出します。その上で、それらの問い合わせにスムーズに対応するためにあらかじめ知っておくべき製品知識をリストアップします。
リストアップした内容を「インストール」、「表領域/データファイルの操作」、「ログメンテナンス」のようにカテゴリ分けし、その上で既存のFAQとの紐づけを行うことで自己学習用の問題集を作成しました。
サポートセンターに配属された若手エンジニアは、FAQの内容をなぞる形でデータベースの管理操作を行い、サポート対応に必要な知識習得を行います。
問題集はFAQを元にしているため、取り組むことでFAQのメリットを享受することができます。
若手エンジニア側
- 若手にアサインされやすい問い合わせの知識を幅広く網羅的に習得できる
- 事前にFAQ化されている知識を把握し、サポート対応で既存のFAQがないか探す癖がつく
- 説明文や手順がわかりやすくまとまっている(FAQは顧客向け資料のため、公開前にマネージャ承認が必要)
育成側
- 問題の作成負荷が低い
- 問題数を多く作ることができる(FAQは100件/年以上のペースで増えている)
- メンテナンスのサイクルを作ることができる
この中でも特に「メンテナンス」の部分が非常に効果的です。サポートセンターでは今までも、様々な学習用のコンテンツを作成してきましたが、作成してから時間が経つと、仕様動作に変更があったりライセンスの条件が変わったりすることで情報が陳腐化し、誰かが気合いを入れて作成した資料ほど修正に多大なコストを要します。(先日も、Oracle Data Guardの学習用スライド500ページほどの全面改訂に取り組んでくれたメンバーもいました)
当社のFAQは、顧客向けの情報として常に最新化された状態を保っており、その対応のためにサポートセンター内にFAQメンテナンスチームを作っています。新人エンジニアが問題集に取り組む→古い情報があればメンテナンスチームにフィードバックする→メンテナンスチームが修正する→次の新人が問題集に取り組む、といったメンテナンスサイクルを作ることができています。
また、自身のサポート対応の中で、まだFAQ化されておらず作成することで効果が見込めるものがあれば、FAQを作成→問題集に追加することで、お客様にとってもサポートメンバーにとっても有益な情報を増やしていくことができます。
FAQを元にした問題は現時点で約150問作成していますが、今後も拡充していく予定です。
あくまで私見ですが「ある程度サポート業務ができるようになった」というレベルに到達するまでに600~700件ほどの対応が必要でした。それを踏まえると当社で目標としている1.5年でのサポートエンジニア育成を見据えて、300問ほどは作成したいと思っています。
今後の展望
サポートセンターに問い合わせをくださるのはデータベースの管理をされている方が多く、エンジニアの育成に課題を感じていらっしゃるお客様の声も多く聞きます。
今回は社内育成に活用しましたが、ある程度サイクルが回って洗練された後には問題集の公開や解説をセミナー化するなどして活用していきたいと考えています。
その際には、改めてご案内しますので期待してお待ちいただければと思います。
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※当社のFAQのご利用には、当社とのプロダクト・サポート契約が必要です。詳しくは下記の「お問い合わせ・見積り依頼はこちら」のフォームからお問い合わせください。
明日はKazuhiro Takahashi
さんです。
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