前回の記事では、VMware HCX(以下、HCX)を使ってオンプレミス環境の仮想マシンをOracle Cloud VMware Solution(以下、OCVS)環境に移行する手順を解説しました。
仮想マシンのクラウド移行においては、移行後の通信経路の最適化はパフォーマンスやコストに直結する重要な課題です。
本記事では、この課題を解決するHCXの機能、Mobility Optimization Networking(以下、MON)に焦点を当て、その機能の概要から具体的な設定手順まで、豊富な画像とともに詳しく解説します。
1)MONとは
MONとは、「トロンボーン現象」というネットワーク上の問題を回避するための機能です。
このトロンボーン現象とは、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行した仮想マシンの通信がオンプレミスのゲートウェイを経由してしまい、結果として遠回りになる現象を指します。
具体的な例として、2つのL2延伸ネットワークを構成し(画像1)、それぞれの仮想マシンをクラウド移行した(画像2)場合を考えます。
この状態で、クラウド環境にある仮想マシンがもう1つのL2延伸ネットワーク上にある仮想マシンと通信しようとすると、オンプレミスのゲートウェイを経由してしまいます。
L2延伸されていても、実際には外部ネットワークを経由してオンプレミス・クラウド間の通信をしているため、非常に遠回りな経路になってしまいます。
この現象を回避するのが、MONです。
このMONを有効化することで、クラウド環境内の通信はクラウドのゲートウェイを使うように構成され、最短ルートで通信するようになります。
2)MONの設定手順
MONを構成する前に、トロンボーン現象による影響を確認するため、まずpingの応答時間を確認してみます。
具体的には、クラウド環境にある仮想マシンから、別のL2延伸ネットワーク上にある仮想マシンへ通信を行います。
pingの結果は以下のとおりです。応答時間が20ms以上となっており、通信に時間がかかっていることがわかります。
それではMONを構成します。
オンプレミス環境で、HCX管理UIもしくはvSphere ClientのHCXプラグインUIを開き、[Services]-[Network Extension]の画面を開きます。
L2延伸しているネットワークが表示されますので、設定を展開するとMONが"Disabled"になっていることが確認できます。
トグルをオンにして有効化します。以下の確認画面が表示されたら"ENABLE"を押下します。
しばらく待つと表示が"Enabled"に変わり、MONが有効化されたことがわかります。
クラウド環境のUIでも"Enabled"になっていることが確認できます。
次に、クラウド環境でL2延伸した各ネットワークの情報を確認すると、ネットワーク上に存在する仮想マシンが表示されます。
これらも展開して詳細を確認します。
画面中央あたりにある"Target Router Location"にクラウド環境のルーターを設定し、左上の"Submit"を押下します。
"Router Location"の欄にルーター名が表示され、"MON"のマークがついたら有効化完了です。
"MON"のマークがつかない場合は、間違ったルーターを選択している可能性が高いので、ルーター名が正しく設定されているか確認してください。
設定後のpingを見ると、応答時間が短くなっていることがわかります。
3)Policy Routesの設定
MONにはPolicy Routesという設定があります。
これは指定したネットワークとの通信をオンプレミスにルーティングする機能で、オンプレミスにあるマシンとの通信が必要な場合に構成しておくと便利です。
※"Policy Routes"は画面上部の[ADVANCED]から設定できます。
MONを有効化している場合、Policy Routesに設定したネットワークへの通信は、オンプレミスにルーティングされるようになります。
逆に、Policy Routesに登録されていない場合は、Tier-0ゲートウェイを経由して外部ネットワークに出ていくことになります。
※OCVSではNSX Uplinkを出入口として通信を行います。
MONを使用し、かつオンプレミスとの通信も行う場合は、このPolicy Routesの設定も活用いただければと思います。
4)まとめ
今回は、クラウド移行後のネットワーク最適化に欠かせないHCXのMON機能について、その設定手順を画像とともに詳しく解説しました。
設定自体はシンプルでありながら、通信経路を最適化しパフォーマンス向上に大きく貢献できることをご理解いただけたかと思います。
このMON機能を活用することで、OCVS環境をより効率的かつ快適に利用することが可能です。
次回もどうぞお楽しみに!