はじめに

本稿は、Verticaのバージョンアップ手順をご紹介します。

バージョンアップによる影響

廃止された機能

各バージョン毎に廃止された機能があります。ご利用中の機能が廃止になっていないか、こちらをご確認ください。

TRUNCATE TABLE 実行後の統計情報

保持のされ方がVertica9.2以前と9.3以降では異なります。詳細は、こちらをご確認ください。

WOS管理方法

Vertica9.2 以前と 9.3 以降では異なります。詳細は、こちらをご確認ください。

Verticaのバージョン

2025年4月時点でリリースされているVerticaのバージョンです。
バージョンリリース日
7.22015/10/23
8.02016/9/6
8.12017/4/14
9.02017/10/13
9.12018/5/1
9.22018/11/30
9.32019/10/14
10.02020/5/11
10.12021/2/3
11.02021/8/11
11.12022/2/24
12.02022/6/21
23.32023/7/7
23.42023/10/4
24.12024/1/9
24.22024/4/26
24.32024/7/26
24.42024/10/29
25.12025/1/16
※バージョンの命名規則ですが 23.3 より変更されています。23.0、23.1 といったバージョンは存在しません。詳細は、こちらをご参照ください。

注意点

(1) バージョンアップパス

バージョンアップパスは、各バージョンで異なります。

<7.2~12.0.4 まで>
段階的にバージョンアップをする必要があります。

<12.0.4 以降>
機能が改善されて、1回でバージョンアップをすることができます。

バージョンアップ前バージョンアップ後
7.28.0
8.08.1
8.19.0
9.09.1
9.19.2
9.29.3
9.310.0
10.010.1
10.111.0
11.011.1
11.112.0.4
12.0.423.3~25.1
23.323.4~25.1
23.424.1~25.1
24.124.2~25.1
24.224.3~25.1
24.324.4~25.1
24.425.1


(2) サポート対象OSの確認

現在のOSが、バージョンアップ後のVerticaバージョンをサポートしている必要があります。例えば、RHEL7.x を利用中の場合は、Vertica23.4 までサポートされており、24.1 以降はサポートしていません。そのため、Vertica23.4 までバージョンアップが可能です。

<11.0 まで>
製品マニュアル > Vertica <バージョン> Supported Platforms > Vertica Server and Vertica Management Console & MC

<11.1 以降>
製品マニュアル > Supported Platforms > Vertica server & MC

(3) 対象バージョンのインストール要件の確認

事前に目的とするバージョンの製品マニュアルにて、Verticaのインストール要件をご確認ください。バージョンによって、追加のOS設定やOSパッケージの追加が必要な場合があります。

<11.0 まで>
製品マニュアル > Installing Vertica > Installing Manually > Before You Install Vertica

<11.1>
製品マニュアル > Installation > Installing Manually > Before You Install Vertica

<12.0 以降>
製品マニュアル > Setup > Set up Vertica on-premises > Before You Install Vertica

(4) メジャー/マイナー/パッチ/HotFixバージョンによる手順の違い

Verticaのバージョン番号は、「v:メジャー」「r:マイナー」「m:パッチ」「n:HotFix」の4種類で構成され、「v.r.m-n」で表されます。それぞれのバージョンアップの手順に違いはありません。
以下のバージョンアップの例は、いずれも同一の手順でバージョンアップできます。
バージョンアップの種類 バージョンアップ前バージョンアップ後バージョンアップの回数
メジャーバージョンアップ
パターン①
10.1.0-012.0.3-03回(10.1 ⇒ 11.0 ⇒ 11.1 ⇒ 12.0)
マイナーバージョン毎に、ひとつずつバージョンアップが必要です。
メジャーバージョンアップ
パターン②
10.1.0-025.1.0-34回(10.1 ⇒ 11.0 ⇒ 11.1 ⇒ 12.0.4 ⇒ 25.1)
12.0.4まではマイナーバージョン毎に、ひとつずつバージョンアップが必要です。
12.0.4からは1回で目的のバージョンにバージョンアップ可能です。
メジャーバージョンアップ
パターン③
12.0.4-025.1.0-31回(12.0.4 ⇒ 25.1 )
12.0.4からは1回で目的のバージョンにバージョンアップ可能です。
マイナーバージョンアップ①9.1.0-09.3.1-32回(9.1 ⇒ 9.2 ⇒ 9.3)
マイナーバージョン毎に、ひとつずつバージョンアップが必要です。
マイナーバージョンアップ②24.1.0-024.3.0-01回(24.1 ⇒ 24.3)
24.1からは1回で目的のバージョンにバージョンアップ可能です。
パッチバージョンアップ12.0.0-012.0.4-261回(12.0.0-0 ⇒ 12.0.4-26)
パッチバージョン毎のバージョンアップは不要です。
HotFixバージョンアップ24.1.0-024.1.0-51回(24.1.0-0 ⇒ 24.1.0-5)
HotFixバージョン毎のバージョンアップは不要です。

(5) オンラインバックアップの互換性

Vertica のオンラインバックアップは、各バージョン間で互換性がありません。例えば、Vertica12.0.4-26 で取得したオンラインバックアップは、25.1.0-3 にはリストアができません。

(6) バージョンアップ前のチェック項目

事前に目的とするバージョンの製品マニュアルにて、Verticaのバージョンアップ要件をご確認ください。バージョンによって、後述の「詳細手順」以外に、追加のチェックが必要な場合があります。

<11.0 まで>
製品マニュアル > Installing Vertica > Upgrading Vertica > Before You Upgrade

<11.1 >
製品マニュアル > Installation > Upgrading Vertica > Before You Upgrade

<12.0 以降>
製品マニュアル > Setup > Upgrading Vertica > Before You Upgrade

バージョンアップ手順

概要

今回は、Vertica 10.0 から 25.1 へのバージョンアップを例に詳細をご説明します。Vertica 10.0 から 25.1 へのバージョンアップする場合は、後述の「詳細手順」を5回繰り返します。
1回目10.0 → 10.1
2回目10.1 → 11.0
3回目11.0 → 11.1
4回目11.1 → 12.0.4
5回目12.0.4 → 25.1

バージョンアップを5回繰り返す場合、「詳細手順」の各項目は以下のタイミングで実行してください。
項目実行タイミング
1. 要件チェックスクリプトの実行1回目(最初)のみ実行
2. バックアップの取得任意(※)のタイミングで実行
4. データベース停止1~5回目(毎回)で実行
5. 追加パッケージの削除1回目(最初)のみ実行
6. バージョンアップ用のRPMインストール1~5回目(毎回)で実行
7. アップグレード・コマンド実行1~5回目(毎回)で実行
8. データベース起動1~5回目(毎回)で実行
9. 追加パッケージの再インストール5回目(最後)のみ実行

(※)バックアップは、切り戻しをしたいバージョン毎に取得してください。

【バックアップ取得例】
バージョンアップ回数切り戻しの判断バックアップの取得要否
1回目10.0 への切り戻しを想定するVertica10.0 の状態のオンラインバックアップと
OSバックアップの取得が必要
2回目10.1 への切り戻しを想定しない不要
3回目11.0 への切り戻しを想定しない不要
4回目11.1 への切り戻しを想定しない不要
5回目12.0.4 への切り戻しを想定する12.0.4 の状態のオンラインバックアップと
OSバックアップの取得が必要

詳細手順

1.要件チェックスクリプトの実行

バージョンアップ予定の環境のハードウェア構成が、Verticaの要件を満たしているかをチェックします。要件チェックスクリプトを実行して、【WARN】および【FAIL】が発生した場合は、サポートセンターまでお問い合わせください。

※複数ノード構成の場合は、全てのノードで実行してください。


Firewall を「無効」にした場合でも環境 によっては、要件チェックスクリプトの実行時に以下の WARN文が出力されることがあります。この場合は「–- failure threshold NONE」を指定し、バージョンアップしてください。詳細は、「7. 」でご説明します。

# CheckNodeNetwork.check_iptables_disabled (0.010s)
WARN (N0010): WARN(eN0010): Linux iptables (firewall) has some non-trivial rules in tables: mangle, filter
https://docs.vertica.com/25.1.x/HTML/index.htm#cshid=N0010

2. バックアップの取得

万が一、バージョンアップが失敗した際のリカバリ用に、既存データベースのオンラインバックアップとOSバックアップを取得します。

3. 修正スクリプトの実行

※この手順は「9.0 から 9.1」および「9.1 から 9.2 」にバージョンアップする際に実施ください。
※修正スクリプトの入手方法は、サポートセンターにお問い合わせください。
Vertica9.1 と 9.2 は、以下の変更がありました。Vertica9.1 もしくは 9.2 へのバージョンアップ前に、スクリプトの実行をおこない、非サポートのプロジェクションを特定する必要があります。

<9.1>
バディプロジェクションの SELECT 句と ORDER BY 句の中で指定しているカラムは、同じ並び順で指定する必要があります。9.1 のバージョンアップ前に、同じ並び順となるように改修するか、使っていないプロジェクションの場合は削除してください。

<9.2>
プリジョインプロジェクションとレンジセグメンテーションプロジェクションが廃止されています。9.2 のバージョンアップ前に、プリジョインプロジェクションとレンジセグメンテーションプロジェクションを使われないように改修するか、使っていないプロジェクションの場合は削除してください。

スクリプトは1回の実行で、上記の両方をCHECKするので、Vertica9.0 からバージョンアップをする場合は、Vertica9.0 と 9.1 の時に2回実行する必要はありません。スクリプトの実施方法については、ドキュメントをご参照ください。

4. データベース停止

Verticaデータベースを停止します。

5. 追加パッケージの削除

R言語等の追加パッケージを別途インストールしている場合は、アンインストールします。追加パッケージをインストールしていない場合は、この手順はスキップできます。追加パッケージをアンインストールしないと、次の「6.」でVerticaパッケージのインストールが失敗します。

6. バージョンアップ用のRPMインストール

Verticaクラスタのいずれかのノードで、rootユーザにてRPMパッケージのインストールを実施します。

7. アップグレード・コマンド実行

rootユーザにて、update_verticaを実施しバージョンアップを行います。
アップグレード・コマンドのオプションは、インストール時のオプションと同じものを指定する必要があります。
インストール時のオプションは/opt/vertica/config/admintools.confファイルの「install_opts」より、確認ができます。

<注意事項>
■要件チェックスクリプトの実行時に(N0010)のWARN文が出力された場合は、「–-failure-threshold NONE」オプションを付与します。
■「–-hosts(-s)」オプションや「–-accept-eula」、OSユーザのパスワードが出力されている場合は、除外してから、アップグレードコマンドを実行してください。


[install_optsの出力例]

[アップグレードコマンドの実行例]

■仮想環境もしくはクラウド環境でアップグレードを実行する場合は、「-–point-to-point(-T)」オプションの付与が必要です。

[install_optsの出力例]

[アップグレードコマンドの実行例]

■ノード追加や削除をおこなったことがある場合、「–-add-hosts(-A)」および「–-remove-hosts(-R)」オプションが出力されているので、アップグレードコマンドを実行する時は、このオプションを指定しないでください。ノード追加や削除を実行するたびに、設定内容は admintools.conf.bak.XXX にバックアップされます。そのため、インストール時のオプションは、admintools.conf.bak.XXX から確認してください。

[install_optsの出力例]
▽ノード追加

▽ノード削除

以下は、クラウド環境の実行例です。

8. データベースの起動

Verticaデータベースを起動します。データベースを起動するタイミングで、パッケージがインストールされます。

<注意事項>
■パッケージのインストールに失敗した場合は、こちらの手順に従ってパッケージを再インストールしてください。

以後、「4.データベースの停止」~「8.データベースの起動」を任意のバージョンまで繰り返します。

今回の例(10.0→25.1)では、残り4回(“10.1→11.0″、”11.0→11.1″、”11.1→12.0.4”、”12.0.4→25.1”)バージョンアップが必要です。バージョンアップパスに関しては「(1) バージョンアップパス」の項目をご参照ください。

9.追加パッケージの再インストール

バージョンアップ終了後、「5.」でアンイストールしたパッケージがあれば、再度インストールをします。バージョンアップ後のVerticaバージョンと同じバージョンのパッケージを再インストールしてください。アンイストールしたパッケージが無ければ、この手順はスキップできます。パッケージの入手方法は、サポートセンターにお問い合わせください。

参考情報

・Upgrading Vertica
https://docs.vertica.com/12.0.x/en/setup/upgrading/

・Management Consoleのバージョンアップ方法について
https://vertica-tech.ashisuto.co.jp/verup_mc/

・Verticaのバージョンアップ方式について
https://vertica-tech.ashisuto.co.jp/version_upgrade_method/

・Vertica 12.0.4以降からのバージョンアップについて
https://docs.vertica.com/25.1.x/en/setup/upgrading/

検証バージョンについて

この記事の内容はVertica 25.1で確認しています。

更新履歴

2025/05/07 25.1用の項目および手順を更新、全体的に体裁を更新
2024/11/25 24.4用の項目および手順を更新、全体的に体裁を更新
2024/07/01 24.2用の項目および手順を更新、全体的に体裁を更新
2023/08/31 12.0用の項目および手順を更新、全体的に体裁を更新
2022/07/05 11.1用に手順を更新、全体的に体裁を更新、
      大項目「バージョンアップによる影響」,「Verticaのバージョン」を新規追加、
      「注意点」に中項目「(4) オンラインバックアップの互換性」,
      「(5) バージョンアップ前のチェック項目」を新規追加、
      「バージョンアップ手順」を中項目「概要」,「詳細手順」を新規追加
2020/08/04 「注意点」に(2)(3)を追加
2019/09/26 スクリプト名を修正
2019/08/14 「データベース起動」の手順に<注意事項>を追加
2019/05/29 手順を修正、および<注意事項>を追加
2018/08/13 本記事を公開